迷子

昨日の暖かさに比べると、風が吹いた分だけちょっと寒かった。
新宿に出る用事があったので、ついでにカメラを持って新宿御苑まで足をのばしてみた。
おかめ桜、寒緋桜、クリスマスローズ、ミツマタなどが咲いていたが、思ったほどではない。
ミツマタは、沈丁花に似たような香りがする。
桜の木の上では、たくさんのメジロが花をついばんでは飛び立ち、また戻ってきてはついばむ。
まるで運動会でも楽しんでいるかのようだった。
そのような様子をカメラに収めていると、何か声がするので足下に目を移した。
すると、小さな女の子が「ママがいない~。ママ~」とベソをかいている。
どうやら、迷子のようだ。
付近を見渡すが、その子のママらしき人は見あたらない。
女の子は、ベソをかきながらも、手にしている小さな布袋を開けてみせる。
中を覗くと、椎の実が6個。
「ママと拾ったの?」と聞くと、ニコ~っと嬉しそうに笑う。
<ああ、いい笑顔だな~。こんな笑顔を撮りたいな~>
<さて、どうしよう?>
一瞬考えて、周囲がよく見渡せる芝生の方に移動しようとすると、女の子はしっかりと人差し指を握ってきた。
芝生の中程に移動し、再度周囲を見渡した。
しばらく立ち止まり、周囲をキョロキョロ。
どこからか、誰かを呼ぶような声が聞こえてきた。
遠くの方から、男の子がこちらに向かって走ってくる。
お兄ちゃんらしい。
「あっ、ママだ!」 
ママに向かって走っていくと思いきや、しっかりと握った人差し指を離そうとしない。
ママが目の前にきたところでやっと手を離し、ママの手によって抱き上げられた。
女の子はかくれんぼのつもりで隠れ、ママが探してくれると思っていたらしい。
ところが、ママは探しに来なかった。
それにしても、ずいぶんと離れたところにいたものだ。
子供の連れ去り事件などが多いご時世で、その子のママは心配ではなかったのだろうか。

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